「インクレディブル・ハルク」(2008)
もう、ここまでCG技術が格段の進歩をとげてしまうと、配給会社も「驚異の映像革命!」なんてフレーズ、安易に使えないでしょ。テクノロジーがいくら発達しようとも、結局は作品の質で勝負しなきゃならないんですよね。でも、実際には存在しない、CGで創造されたキャラが、その演技力を買われて、オスカーにノミネートされる。そんな時代が訪れても、驚きません。いまのところ、賛同はしかねるけれど。
アメコミ原作の映画の醍醐味は、なんといっても、魅力的な悪役ですよ。今作でいえば、ロス将軍と、特殊部隊員のブロンスキーですか。で、それぞれの役を、演技派のウィリアム・ハートとティム・ロスが演じているんです。彼らは非情な悪党なのか。僕には、ミッションに忠実な職業軍人にしか見えませんでした。ハルクを捕らえるために、みずから人体実験を志願するブロンスキーに、悪の匂いはまったく感じられませんでしたね。「これがオレの仕事だからな」。セリフにはなくとも、そんな顔をしていましたよ。クライマックスはお約束の、モンスター同士の肉弾戦になるわけですが。なんのために、前半に、あのヒクソン・グレイシー本人を登場させたのか。意味ないじゃん。
それにしても、興行的に失敗したとはいえ、たった5年前に製作された映画を、なぜリメイクしたのか。本作のラストのセリフがその答えなんでしょうね。マーヴェル・コミックス最強!