「ドライヴ」(2011)
久しぶりに出会った、不思議な味わいの犯罪映画。名無しの主人公「ドライバー」はどうやら流れ者で、昼は自動車の整備工をなりわいとし、時には映画のスタントマン、そして時には強盗犯の片棒をかつぐことで生計をたてているらしい。物語前半、主人公がヒロインと知りあい、心を通わせるあたりのセリフは極端に少なく、それでも観るものを退屈させないのは、いちいち構図が明確に定まっているからであり、タンジェリン・ドリームやマニュエル・ゲッチングみたいなエレクトリック・ミュージックも中途半端に古くて楽しい。とにかく、ほとんど事件がおこらないながらも、デンマークが生んだ俊英・ニコラス・ウィンディング・レフン監督の持つ才覚は十分にうかがえる。このストイックなスタイルに、北野武を連想する人もいると思う。
中盤以降、ヒロインの夫が帰ってくることで調和が破られ、まるで別の映画が始まったかのような、R15+指定のやけに血なまぐさいシーンが登場するけれど、これは各々の好みの問題。パンフによれば、本作の監督にレフンを指名したのは、主演をつとめたライアン・ゴズリングだとか。再びレフンとタッグを組むとのことで、かつてのマーティン・スコセッシ&ロバート・デ・ニーロのような関係を築くことができるのか、ちょっと期待。