「コンテイジョン」(2011)
人間を死にいたらしめる謎の新型ウィルスの脅威を描いたパニック・ムービーなのだが、スティーブン・ソダーバーグ監督は、かつての「トラフィック」を彷彿させる、つとめて派手さを抑えた淡々とした演出で、まるでドキュメンタリーを観ている気分にさせられる。豪華俳優陣も過剰な演技はほとんど見せないのだが、それでもスクリーンにグイグイ引きこまれてしまうのは、監督の熟練した手腕の賜物でしょう。
本作で扱われる「目に見えない恐怖」はウィルスだけではない。それはネット社会。世界中が感染に怯えるなか、ひとり気炎を上げるのが、フリー・ジャーナリストでブロガーを演じるジュード・ロウ。真偽が怪しい情報を動画でブログにアップし、膨大なアクセス数を稼いでご満悦だが、そのブログにアクセスする一般市民の姿は描かれない。CDC(アメリカ疾病予防管理センター)の医師の不正を糾弾するシーンでの証拠となるのが、Facebook。その情報提供元も曖昧。個人ブログやSNSが実体のないコミュニケーションでありながら、確実に大衆を扇動する様を徹底して描いているようで、個人的にはかなり不気味でした。佳品ではありますが、潔癖症の方々にはおすすめしません。