「極悪レミー」(2010)
いや、もう、ただただ感服するのみ。モーターヘッドのリーダーであり、ロック界のボスであるレミー・キルミスターは、あまりにもレミーそのものでありました。
映画は自宅である、足の踏み場もないような安アパートの一室で、暗がりのなか、黙々とビデオゲームに興じるレミーの姿から始まる。カジノではひたすらスロットマシーンに打ちこみ、行きつけのバーでも、酒を片手にカウンター備えつけのゲームにひねもす熱中。オジー・オズボーンのセリフだったか、レミーは究極のマイペース人間なんですよ。おそらくレミーは、過去を含め、自分のライフスタイルを特別なものとは思っていないようで、そのナチュラル・ボーンさが可笑しくもある。みずからCDショップに出向き、店員に「あー、ビートルズのモノラルのBOXセットは売り切れ?」と尋ねるレミー、フランクにもほどがあるよ!
いささかウザく感じるほど、多くのミュージシャンが登場し、レミーの偉業を讃えるんだけど、メタリカやアンスラックスだけでなく、ラッパーのアイスTにいたるまで、みんなモーターヘッドのキラーチューン「Ace of Spades」を愛しているんだよなぁ。
「Motorhead_Ace_of_Spades.mp4」をダウンロード
自身の酒やドラッグの逸話には事欠かないけれども、インタビューを受けて「いままで、ドラッグのおかげで多くの仲間が死んでいった。これ以上悲しい思いはしたくない」と誠実に語る。それなのに実の息子には「ヘロインには手をだすな。コカインまでだ」って教育してるところがますますレミー! 過激な邦題につられて、ひたすら爆音が流れる映画かと思えば、根底には静謐な空気が流れているというか。やはり主人公の人柄のせいかな。エンドロールを観ながら、なにか温かいものに浸っている気分になった自分にちょっと驚きです。