「ジャーロ」(2009)
タイトルの「ジャーロ」とは本来イタリア語で「黄色」の意だが、70〜80年代にイタリアで大流行&大量生産された猟奇サスペンス映画を指す。言うまでもなく本作の監督・ダリオ・アルジェントは、そのジャーロ映画を牽引してきた傑物。過去に自分が手がけてきた作品の美味しい部分を抜きだして、それらをパッチワークするだけで、容易にファンを満足させる作品をつくることができたはず。セルフ・パロディと後ろ指を指されるだろうけれども。
果たしてアーティストであるアルジェントは前進することを選んだ。自分の映画を観て育った若者が書いた脚本を使い、オスカー俳優・エイドリアン・ブロディを主演にすえて。失敗を恐れない。映画が撮れりゃあ、失敗してもどうってことない。周りの評価なんぞ二の次。観ているこっちだって、アルジェントという映画監督の生き様というドキュメンタリーを体験しているのだ、ということに気づけば、途中何度となく睡魔に襲われようが、それがどうした、と開き直りもできるはず。最初に犯人の毒牙にかかるのが日本人なのも「ジャーロ」と「黄色人種」を引っかけたジョークかもしれないじゃん。ラストシーンは秀逸で、思わず身を乗りだしてしまったのですが、これも個人的な趣味なので、おすすめはしません。