オーグロ慎太郎の「新・夜明けのない朝」

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「アウトレイジ」(2010)

Outrage この映画を観ると、「ヤクザ」ってのは稼業ではなく、もう人種なのではないかという思いを禁じずにはいられません。「そういう生き物」という見方も大げさではないんじゃないか。人間誰しも多かれ少なかれ、破壊衝動を抱えているとはいえ、なぜあそこまで過剰な暴力に走るのか。それはもう理屈では解明できない、ああいう連中の習性なんだと自分に言い聞かせないと説明がつかないシーンが次々と飛びだす。

「俺だけ死なねぇわけにいかねぇだろ!」なんてセリフも決してアウトサイダーの美学ではなく、弱小ヤクザのちんけなプライドにしか聞こえないほど、どうしょうもない男たちが、これまたじつに些細なきっかけで、ひたすら休息の間もなく殺し合う。その様を、登場人物に感情移入させないためか、冷めて突き放した演出をしているため、これはもうヤクザという珍獣の生態を追ったドキュメンタリー映画として観るべきかも。「内容がない」「薄っぺらい」という批判が続出するのも理解できます。が。スクリーンから一刻も眼が離せない緊張が続くなか、時折とぼけたセリフや間で観客をクスっとさせる。そのクッションの入れかたに、僕はベテラン監督の余裕とサービス精神を感じましたね。

100614