「第9地区」(2009)
我々人類より高度な文明を持ち、理由はよく分からないけれど、わざわざ遠方から地球を侵略しにやって来る。そんな先入感を抱きがちな、ハリウッド産SF映画に登場する異星人・エイリアン。ところが本作では彼ら、じつは難民であり、「第9地区」という名のスラム街に隔離されていて、人間に虐げられながら生活している。この設定がユニークだし、舞台が南アフリカというのも新鮮。かつてアパルトヘイト政策が敷かれていた国だけに、なるほどなるほど。でも、これは物語に説得力をもたせるための設定に過ぎず、本作の肝ではないと思う。
近年の流行を取り入れたのか、やたらグラグラする手持ちカメラによる映像には食傷気味だけど、観客を楽しませるために、これでもかと詰め込まれた数々のアイデアには感心せずにいられません。これぞ娯楽映画。主人公が逆境に陥る原因も、よく考えると説明不足で、ちょっと分からない。重箱の隅をつつけば細かい疑問はもっとでてくるのかも知れないけれど、そんなモンを押し切る、特に中盤以降の勢いの良さはどうだ。予想以上に残酷な描写もあるけれど、笑えるシーンも冴えている。鉄板で弾よけをしながら、ダッシュでピンチを乗り切るエイリアンなんて初めて観ましたよ。クライマックスのハチャメチャなアクションには胸踊らされましたが、軽くため息。あれこそ、日本映画が世界に先駆けて作らなきゃいけない映像なんじゃないッスか!?