THE MAN NEVER GIVE UP - 勝新太郎
話の流れで「最近、読んだ本でオモロかったのは?」と尋ねられたとしたら! 春日太一著「天才 勝新太郎」(文藝春秋刊)って答えるでしょうね。
豪放磊落でサービス精神旺盛な役者馬鹿としては語りつくされた感もある、名優・勝新太郎を「採算を考えるなら会社をやる意味がないんだよ!」が口癖のプロダクションのオーナーとして、そして金銭に糸目をつけず、テレビドラマでも一切の妥協を許さなかった、監督・脚本家としての勝を、綿密なリサーチのもとに、はやる気持ちをおさえて(←勝手な想像です)冷静に見つめた力作です。
「視聴者に言っておけ! オレの作品が始まったらテレビの前に正座して1カットも見逃さないようにとな!」…このセリフ、勝新の肉声で聞いてみたかったなぁ。
という訳で、不満ではありませんが、この名著には、長唄から始まった芸能人生にもかかわらず、勝新の音楽家としての、とくにシンガーとしての側面には光が当てられていません。そこで僕はこの本を読了後、1枚のCDを引っ張りだしたんですよ。『The Man Never Give Up』。
勝新太郎の生き様をそのまま綴ったような歌詞にもシビれますが、なんなんでしょう、この尋常じゃない抱擁力にあふれた歌声! スピーカーから伝わってくるぬくもり。耳で聴く湯治。そして、気がつけば、もう3月。