オーグロ慎太郎の「新・夜明けのない朝」

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「スペル」(2009)

Drag_me_to_hell 銀行に勤める主人公が、怪しげな老女の逆恨みで呪いをかけられるんだけど、その理由が、住宅ローン支払いの延長を拒否されたからという設定。えッ、これって、現在のアメリカに影を落としているサブプライム・ローン問題をネタにしてるの? そんな社会派ホラー、楽しめるのだろうか…。杞憂でしたね。どこを切り取っても、サム・ライミ監督流サービス精神全開の快作でした。湿っぽくて陰気な超大作「スパイダーマン」シリーズを手がける以前。「死霊のはらわた2」「ダークマン」。あの、悪ふざけ満載のライミ節が帰ってきたんです。

まわりの観客の空気をまるで読まず、上から目線で、笑うためにホラー映画を観にくる輩っているんですよ。僕も何度か遭遇しましたが、今作に限っては不問にしましょう! ハエとか鼻血とか! 本国アメリカの劇場では、観客、爆笑しまくってるんじゃないスか? 観客を不快な気分にさせるような下品な描写がいくつかありましたが、あまり汚く感じなかったのはキャリアの功なのか、監督の品格なのか。ロバート・ロドリゲスが演出したら、どうなっていたんだろう。そんなことを考えてました。

死にたくないから、主人公が自分にかけられた呪いを解くために奔走するストーリーなのに、原題を邦訳すれば「私を地獄へ引きずりこんで」。すっかりハリウッドのヒットメイカーに登りつめたのに、内面は小市民的なモラリストの心を失っていない、サム・ライミの素顔がうかがえます。

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