「空気人形」(2009)
巨費を投じたハリウッド映画ばかりでなく、たまには邦画も観たいじゃないですか。んで、かなり男の劣情に訴える作品だというネットの噂で、本作を鑑賞しました。下世話で俗な人間ですんで。
これはファンタジーなんだ、寓話なんだと、いくら自分自身に言い聞かせても、あまりにも精神衛生上良くない、閉塞感ただよう、舞台となる東京の下町。そして孤独でアブノーマルな登場人物。埋まることのない空虚を心に抱えた男たちが、揃いも揃って映画マニアという設定はなんなんだ。名画座で映画を観ることが幸せ、好きな映画を語ることがなによりの悦び。そんな人生、やだよ〜…。鳥肌がたちました。そんな世界になぜか生まれた、心を持ってしまったラブドール・のぞみ。5980円。純粋なのに、自分の役目が、野郎のセックスの代用品だということを心得ているのがせつなすぎる。
主演のペ・ドゥナの素晴らしさについては、あえて触れません。すでに多くのホームページやブログで語り尽くされているだろうから。それでも、レンタルビデオ店で身体に息を吹き込まれるシーンはあまりにも官能的で、ここだけを観るために入場料を払う価値があるかもしれません。まさに泥のなかに咲いた一輪の花。ペ・ドゥナさん、あなたは素晴らしい女優です。エンドロールのなか、心のなかで惜しみない拍手をおくりましたよ。