オーグロ慎太郎の「新・夜明けのない朝」

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最後に勝つ負け方を知っておけ

俺が議員になると言いだした時は、みんな「冗談でしょ」って顔をした。いくらプロレスで知名度はあっても、当選なんかするわけがないだろうと。

でも俺はみんなに言った。「これは天の声だ」と。

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こんな書きだしから始まる、1989年に参議院選挙で初当選し、勢いにのって世界中を外交訪問していた頃の、アントニオ猪木著「最後に勝つ負け方を知っておけ」(1990年初版)。主に若手サラリーマンへ向けて、人間関係をはじめ、壁に突き当たった際、その困難をどう乗り越えるのか。そういう意図で書かれた本のハズなんだけど、果たして最初から最後まで、みっちりと猪木の自分語りでしかない、結局はプロレスラー・アントニオ猪木ファン、いや、人間・猪木寛至ファンを喜ばせるだけの内容で終わってしまうところが賛否両論分かれるところでしょうか。

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猪木の人生を語るうえで、決して欠かせないもの、それは「借金」。どうやったら借金をしないで済むか、ではなく、まず何十億円レベルの借金ありき、で話が始まるのがさすが猪木。で、そんな借金地獄に陥った時、どうすべきか。猪木は説く。とにかく逃げるな。借金取りにも誠意をもって応対しろ。そんな自分を恥じ入るな。そんな漠然としたアドバイスを実践すれば、「もう、借金なんて屁でもない。こんなことを言うと、借金取りが怒って来るかな」。ここまでノンキになれる。らしいです。

猪木が政界から去って久しい現在、この本の効能は読み手にほとんど届かないかもしれないけれど、当時の猪木の頭のなかが、つねに借金で占められていたことはよーく分かる一冊です。

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