オーグロ慎太郎の「新・夜明けのない朝」

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「スパイダーマン3」(2007)

Spider_man_3

映画史上最高の製作費を投入したという特殊効果映像については、もうなんの説明もいりません。だまって味わうべし。映画の上映開始早々におっぱじまる、主人公ピーター・パーカーとニュー・ゴブリンの空中戦なんて、映像が暗いとはいえ、動体視力が鈍いヒトには、なにが起こっているのか追いていけないんじゃないかってぐらいの疾走感。監督サム・ライミの「遊び」が過ぎるんじゃないかと心配してしまうほどのCGの狂い咲き。2時間を超える長丁場を一瞬たりとも飽きさせない、じつにテンポの良い演出。大ヒットして当然の超大作です。

だけど。なんなんだ、この映画全体に漂う湿っぽさ。思い返せば、この映画、登場人物が誰ひとり幸せになってないんじゃないの? 記憶違いだったらアレですけど。今作では3人の敵がスパイダーマンの前に立ちふさがるんですが、それぞれが「主人公の元・親友」「主人公の叔父を殺した脱獄囚」「主人公のバイト先のライバル」。狭い。あまりにも狭い世界。べつに地球を救えとは言わないけどさぁ。高層ビルから落下する女のコを助けてみたら、大学のクラスメート。これまた狭い。くわえて厄介なことに、この映画、よくできているのにカタルシスがまったく味わえない。もう、ひたすらに怨念のぶつけあい。原作に忠実だとかぁ、そんなのどうでもいいです。馬鹿にされて結構ですが、単なる気晴らしのために映画館にふらっと足を運ぶ僕のような人間は、「ロッキー・ザ・ファイナル」のような清々しさを求めているのに。

この映画のテーマはホンット単純明快。オーバーかもしれないけど、小学校の道徳の時間の教材としても通用しそう。なんだろう、こういう映画を利用して啓蒙しなければならないほど、現代のアメリカは心が荒んでいるということなのか。だとしたらちょっと怖い。

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