オーグロ慎太郎の「新・夜明けのない朝」

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「ブラックブック」(2006)

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ナチス・ドイツ占領下のオランダを舞台に、ひとりのユダヤ人女性の数奇な運命を描いたこの映画、監督のポール・バーホーベンがかつて「私はつねに大衆が理解できる娯楽映画をつくっている」と発言したとおり、ハリウッドを離れ、母国オランダで製作したとはいえ、サスペンスの要素をふくんだ一大エンターテインメント作品に仕上がっている。そしてバーホーベンは、今作でも、自分の趣味嗜好 & 観客が秘かに映画に望んでいるモノを惜しげもなく映しだす。それはセックスであり、暴力であり、大量殺人であり、死体であり、汚物の山であり。女の裸もたっぷり堪能できるけれど、なんの必然性もないのに中年男のだらしないフルチン姿も見せられる。それがバーホーベンのひねくれたサービス精神なのか、リアリズムってやつなのか。どっちでもいいですけど。

「いまは誰も信じられない時代だ」というセリフが劇中に登場するけれど、なんちゅうか、裏切りのオンパレード。坂口征二だったら「人間不信」と書き置きして、とっとと失踪してしまいそう。善人が必ずしも報われるわけではなく、悪人にいつも正義の鉄槌がくだるとは限らない。「善」を否定はしないけれど、いつの世にも「悪」は存在する。どうやらそれが、ポール・バーホーベンの世界観のようです。

070402