「キング・コング」(2005)
それにしても、コングが気の毒でならない。巷ではこの映画を悲劇のラブ・ストーリーと評し、感動で涙せずにはいられない、みたいな感想をネット等で眼にしますがぁ…。こういうことを書くと、「夢がない」「ひねくれている」と思われてしまうかも知れません。しかし。正直。勇敢で優しい心の持ち主で、愛する女性のために必死で闘う頼もしいヤツだとしても……。ゴリラじゃん! 人間じゃないじゃん!
ヒロインの女性も悪気はないんだろうけど、コングに恋愛感情を抱かせるようなことをやらかしちゃったわけでしょ、動物と人間との恋愛なんて成就するはずないのに。せっぱ詰まった状況とはいえ、このてのモーションって、とくに純粋な心の持ち主にとっては、ものスゴく残酷な行為だと思います。ヒロインを奪回するために、船に突進してくるコングは、僕から見れば、ほとんどストーカーでしたよ。
ニューヨークに連れてこられて、いろいろあってエンパイア・ステート・ビルによじ登って、コングはああいう結末をむかえるわけですが。じゃぁ、ほかにどういう選択肢があるのかと。よしんば髑髏島にコングを帰したところで、コングは死ぬまでヒロインのことを忘れられないだろうし…。とにかくコングが憐れ。ヒロインもふくめ、人間は残酷で非道。暗澹たる気持ちで映画館をあとにしました。
とてもよくできている作品だと思います。上映時間は約3時間ですが、退屈する暇がないほど見せ場は用意されているし(驚きはないけれど)。でも「よくできている」と「面白かった」は別なんですよね。鑑賞しているあいだ、何度も、むかし観た、監督・大島渚&主演・シャーロット・ランプリングの「マックス、モン・アムール」という映画を思いだしました(allcinema ONLINE 参照)。ストーリーなんかほとんど憶えてないんだけど。