「アウトレイジ ビヨンド」(2012)
北野武監督が手がける初の続編映画、一筋縄ではいかないだろうとは思っていたけれど、まったく意外。まずは膨大な量のセリフ。幅広い観客層に受けるための配慮とはいえ、状況等を登場人物のセリフでここまで饒舌に説明することは、これまでの北野映画では避けられてきたこと。そして、前作では私欲まみれできわめてドライだった人間関係に「任侠」が芽生えている点。驚くほどクセがなく、それはおもねったのかと勘ぐりたくなるほどである。
いい歳こいたいかつい男たちがとことん怒号を飛ばし合うのだけれど、はたして21世紀の日本にこんな粗野なヤクザが存在するのか。そういえば深作欣二の「仁義なき戦い」を ある著名な作家が「集団喜劇」と賞賛していたけれど、それを踏まえて思い返すと、緊張感みなぎる罵り合いがなんだか可笑しくなってくる。ヤクザの生態を誇張して、特殊な世界を描いているのは前作同様。それにしてもスクリーンで観るビートたけし、歳を取りました。海外受けを狙ったとは言わせない、アートではない。ギミックを取っ払い、長引く停滞から抜け出せない日本で「こんな映画、撮れるモンなら撮ってみろバカヤロウ」と叫ぶ。そんな、監督のむきだしの憤怒(アウトレイジ)のような痛快作。