オーグロ慎太郎の「新・夜明けのない朝」

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「ファミリー・ツリー」(2011)

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アレクサンダー・ペイン監督ならではの、淡く、ゆったりとしたタッチで描かれた「家族の再生」の物語。なのだけど、僕はこの作品を観ているあいだ、ずっと「無常」という二文字を考えていました。この世のものはすべて変化していく。形ある物は失われ、人はかならずこの世から去っていく。法律にのっとって売却しなければならない先祖から受け継いだ土地は、やがてその景観を失い、一大リゾート地になってしまうだろう。雄大な自然と比べれば、人の一生はとても短いし、きっかけはどうあれ、誰もその運命には逆らえない。

ジョージ・クルーニー扮する、家庭をほったらかしてマイペースに生きてきた主人公・マットがオタオタする様。それは「我々みんな、頭では理解できてたつもりだけど、やっぱり変化するなんて心の準備ができていないし、怖いんだよ」ということを表しているんじゃないのかなぁ、と。そんなマットも、温和なハワイの気候に助けられてか、時間をかけて、周りの人間の支えも借りて、やがてそれらを、つまり「諸行無常」を受け入れ、歩きだせるようになる。周りの愛する者に常に気を配っておきなさい、だけではさほど胸には残らなかったかもしれない。こんな勝手な解釈をしてしまうのは、やはり僕が、3.11の震災を経験したこの国に暮らしているからなんでしょう。

邦題の意味するものは、それぞれの家族の系譜をたどるための家系図。原題の「The Descendants」は子孫・後裔の意。主人公が運命を受け入れた後、目を向けなければならない先が分かれば、どちらが本作にふさわしいタイトルかは明白。そういえば最近、気の利いた邦題の洋画が少なくなりましたね。

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