オーグロ慎太郎の「新・夜明けのない朝」

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「ルチオ・フルチの幻想殺人」(1971)

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昨日、3月13日はイタリアン・ホラー・ムービーを語るうえには決して外せない映画監督、ルチオ・フルチの命日だったんだそうです(Twitter)。それとタイミングを図ったかのように、フルチの隠れた傑作「幻想殺人」が国内盤DVDで発売されました。

 

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1970〜80年代のイタリア産猟奇ミステリー映画は「ジャーロ(Giallo)」と呼ばれますが、犯人探しや謎解きにはあまり重点をおかずに、セックス・暴力・残酷シーンに工夫を凝らすのが特徴。おびただしい亜流作をふくめ、とにかく濫造されたジャーロのなかでも永きにわたりマスターピースとして語り継がれてきた本作。物語は、主人公・キャロル(フロリンダ・ボルカン)が夢のなかで殺人を犯してしまい、それが現実に起こってしまうというもの。やたらと艶やかな映像と音楽には魅了されるしかないけれど、なんだか犯人が誰か、なんてどうでもよくなってきたよ…。という御仁、全然それでいいんです。

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映画の冒頭でキャロルが見る幻想(というか淫夢)。当時のサイケデリック・ムーブメントの流行も取り入れちゃって、いやー、頭がクラクラするほどの美しさ! 音楽はモリコーネ要するにフルチ監督、とにかくこのシーンを撮りたかったと! 分かりやすい! 後年「サンゲリア」「ビヨンド」でストーリーはどこへやら、やたら目ン玉をくり抜いたり木片を突き刺したり。作品のバランスを欠いてまでもエキサイティングな映像を優先させるフルチの手法は、ジャーロでも十分有効なのです。「ゲテモノ監督」という肩書きばかりが先行するフルチですが、本作のリリースにより、上質の娯楽映画監督という側面にも光が当たることを願うばかりです。

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