「さや侍」(2011)
なんだかんだで、松本人志の映画は、野次馬根性で3作とも映画館で観ている。今作、初の時代劇ということに加え、前2作よりもなにやらシリアスな雰囲気が漂っている気がして、少々マジメに(?)鑑賞した。つもり。
ストーリーの説明は書かないけれど、奇抜なものを期待すると、果たして王道ど真ん中。これはちょっとした驚きです。観客をどうにかして笑わせてやろうという熱気が感じられず、なにより主人公のさや侍・野見勘十郎が「三十日の業」で披露する宴会芸もどきや「お笑いウルトラクイズ」チックな身体を張ったギャグのセンスの古さが半端じゃない。半可通なりに、この映画の眼目は別のところにあるのでは、と思いながら観ていたら、そのクライマックス・シーンはじつに唐突に訪れたんだよなぁ…。
現実からズレた、不条理な笑いを得意とする松本人志が、正面から親子の情を描く。強引な物言いをすれば、松本監督がわざわざ撮る必要がないテーマですよ。真意は分かりませんが、あえて手垢がついたジャンルからひらめきを得ようとしたのか、もしかすると次作でふたたび「映画を壊す」ために仕切りなおしをしたのか。そう考えたほうが楽しい。ヘンに身のほどを決めちゃったり、達観しちゃったり、そんなの面白くありませんからね。