「アンストッパブル」(2010)
「暴走する列車を止める」この映画のストーリーの説明は、この一文で足りてしまう。些細な人為的ミスがきっかけとはいえ、暴走はアクシデント。したがって、そこにはなんの陰謀もないしテロリストもいない。とことん贅肉をそぎ落とした脚本が清々しい。主人公2人はそれぞれプライベートに問題を抱えているけど、それらは添え物扱い。近ごろでは珍しい、99分という上映時間は、ほとんどすべてが、最新技術を搭載した無人の暴走列車と人間の知恵との対決に注がれ、すべての登場人物の視線はその一点に向けられる。そのなんとシンプルかつ濃密なこと!
リアル感を重視し、安易なCGの多用を避けたことが功を奏してか、暴走列車が怪物と化していく重たい恐怖が嫌でも伝わってくる。鑑賞後にあまり余韻が残らないのが、いかにもトニー・スコット監督作品だけど、観ているあいだは手に汗握らずにはいられない、娯楽映画の快作であり、久しぶりに野郎どもの「男気」に胸を躍らさせてくれました。