オーグロ慎太郎の「新・夜明けのない朝」

生まれる時代を間違えたような気がするけど、それでも生きてるイラストレーター。お仕事は随時承っております。Contact me. : cannabis●ce.mbn.or.jp(スパム対策のため、●を@に変えてご使用下さい) http://shintaro-ooguro.com

「ラブリーボーン」(2009)

The_lovely_bones 主人公の少女が天に召されてから始まる物語。その程度の予備知識で遅ればせながら鑑賞しましたが。ファンタジーというジャンルでくくるには、なんというか、かなり異色な作品ですよ。批評家の受けが悪いとか、興行成績があまり芳しくなかったとか。仕方ないなぁ、これは。

14歳のスージー・サーモンがこの世を去る理由が殺人。少女を狙った殺人事件なんて、陰惨なイメージしか湧かないし。映画では描かれていないけれど、当然陵辱もされてるでしょ。ここから、天国の手前で下界を見守るスージーと、長女を失った悲しみにくれるサーモン家の二つの視点で物語は進むのですが、これが落ち着かない。両視点とも、現実を受け入れられずにうろたえてばかりですから。ブライアン・イーノの懐かしのナンバーが流れても収まりがつかないなか、唯一、腰を据えて描かれている人物が件の殺人犯なんです。

このロリコン変態殺人鬼を演じたスタンリー・トゥッチ、アカデミーの助演男優賞にノミネートされています。それだけ丁寧に、細かくこの男を演出した監督のピーター・ジャクソン、なにかコメントを残しているんでしょうか。原作の小説を読んでいないので、じつに興味深いですね。カタルシスが味わえるのか、と思いきや、肩すかしを食らうこと数回。「思うようにいかないけど、それでも人生捨てたもんじゃないよね」が、ひょっとしたらこの映画のテーマなの? と気づく頃には、もう映画も終盤です。

そもそも、原題の「The Lovely Bones」の意味がよく分からない。原作を読むと、そういうことか、と腑に落ちるらしいですが。

100216