プロレス「地獄変」
以前このBlogでも紹介したムック「プロレス下流地帯」に掲載された劇画がよほど評判良かったのか、描きおろしも加えて原田久仁信先生のプロレス劇画集「別冊宝島・プロレス『地獄変』」が発売されました。表紙のメガネのおっさん、誰? と一瞬首をひねるものの、えッ、ば、馬場元子さん! 本書を無粋な暴露本と呼ぶなかれ。これは80年代の新日本プロレス絶頂期をリアルタイムで知る、酸いも甘いも知っているプロレスファンの大人のための劇画集であります。
81年、田園コロシアムで組まれたアンドレ・ザ・ジャイアント vs スタン・ハンセン戦の、知られざる舞台裏。連日全力ファイトで観客を沸かすも、過剰なサービス精神が裏目にでて、金銭感覚が狂ってしまった阿修羅・原。常人離れした肉体を授かったがゆえの、アンドレに募る孤独。実直に生きることしかできないがために、屈辱的なマッチメークを黙って飲むラッシャー木村。とくにラッシャーのエピソード、個人的に、胸にグッと詰まるものがありました。プロレスが好きで良かった……。しかしッ!
どうしてもWJのエピソードだけは、笑いをおさえることができません! 元取締役の永島勝司、いちいち一喜一憂が激しすぎ! リアクション大げさすぎ! アントニオ猪木や元子夫人、K-1の石井館長にふりまわされる(なにげにK-1の裏側を暴いているんだけど…いいの?)、脇の甘さは天下一品のゴマシオ(永島)と、プロレスに余計な仕掛けは必要ねえと言い張る、頭がカテエ、ミツオ(長州力・本名吉田光雄)がタッグを組んだら、面白がるな、ってのは無理な話ですって。もうひとつ! 猪木に軽く凄まれただけで、直立不動で震えあがる「おでん社長」こと藤波辰爾の情けなさ。これも看過するわけにはいきません。