オーグロ慎太郎の「新・夜明けのない朝」

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「ウォッチメン」(2009)

Watchmen 劇場に行くと、プログラムが売り切れていました。観終わってそりゃそうだよなぁ、と納得。鑑賞後に「いったい何だったんだろう?」状態になるヒト続出なんじゃないですか。娯楽超大作映画のスタイルを借りているものの、かなりハイリスクな賭けに挑んだ意欲作です。

物語の骨子はオーソドックスなミステリーなのだけれど、「犯人探し」という点についてなら、とくにひねりのない、さほど難しくないものでしょう。この映画の肝は、163分という上映時間にありったけ詰め込まれた、サイエンス・フィクション、1980年代の国際情勢(米ソ冷戦 & アフガン侵攻)、核兵器の脅威、石油に代わる新たなエネルギー源、正義&平和の定義、過剰なセックスと暴力、大量の血糊、そして哲学。それどころでは済まない情報の洪水にあふれた、権威あるヒューゴー賞を受賞した原作のグラフィックノベルに忠誠を誓った、観客を置き去りにすることも厭わない脚本&演出にあり、その作り手の姿勢を肯定的にとらえることができるかどうかで、大傑作なのか、それとも少数のマニアに向けられた珍作なのか、評価が分かれるのではないかと。

時間軸もかなり前後していて、10分程度の居眠りで、もうストーリーを把握できかねない映画ですが、ロック・クラシックの使い方はじつに分かりやすい。あのタイミングでいきなりジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンスが流れるとは。そのまんまじゃん。無理に理解しようとせず、ぼんやり眺めていれば、まったく退屈はしませんでした。

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