「イースタン・プロミス」(2007)
デヴィッド・クローネンバーグ監督の前作「ヒストリー・オブ・バイオレンス」には巷の高評価のわりには、いまいち乗り切れなかったんだけど、今作は、一瞬たりともスクリーンから眼をそらすことができませんでした。とか書いておいて、本編始まってしばらくのあいだ、舞台がロンドンだということに気が付かなかったんだけど!
これまでのクローネンバーグ監督作の主人公は、己の心身の変化や、置かれた異様な状況に馴染むことができず、迷走を続けてしまう人間が多かったですよね。しかし、本作のヴィゴ・モーテンセン演じるロシア人運転手・ニコライは、違います。自分が何者なのか。自分がどこにいるのか。なにをすべきなのか。それらを十分理解しています。どこを目指しているのかは、曖昧に描かれていますが。
監督のこだわりである、観る者に存分に痛みを伝える、残酷な描写もいくつかあり、万人受けする作品ではないけれど、僕が今年の上半期に観た映画のなかでは、ベスト1なんじゃないかなぁ。