「ゾディアック」(2006)
「ゾディアック事件」については中学生のころ、本で読んで知っていたし、「ダーティハリー」に登場する殺人犯・サソリのモデルがゾディアックだということも知っていました。この未解決連続殺人事件を映像派のデビッド・フィンチャー監督がどう作りあげるのか。少々不安もあったけれど、楽しみにしていました。なるほど、極力ケレンを抑えた仕上がり。しかし上映時間は2時間37分。
物語の前半で描かれる殺人シーンはじつにスリリングでなかなか怖い。暗号文を送りつけ、警察やマスコミをおちょくるゾディアックは、姿は見せないけれど、かなり魅力的な男に映ります。ところがこの映画、まるで二部構成のように、中半以降、刑事でもなく、新聞記者でもない風刺漫画家・ロバート・グレイスミスが主人公になり、犯人探しに奔走を始めるあたりから、とたんに、印象がガラリと変わってしまうんですよ。酒もタバコもやらず、趣味はパズルを解くことと図書館通いという、かなりオタク気質のこの男を受け入れることができるかどうかで評価は分かれるんではないでしょうか。鑑賞中、僕がずっとこころのなかでつぶやいていたのは「自分の趣味で周りの人間に迷惑をかけるなよ!」ということ。明らかに正義感や倫理感で動いていないでしょ、このヒト。とくに妻(クロエ・セヴィニーなのに!)や子供を危険にさらしてしまうあたり、ちょっと失笑してしまいました。実際におこった殺人事件をあつかった映画でこんな感想をもつのは不謹慎かもしませんが。謎は謎だから興味深いんであって、無理矢理それを暴いてしまうのは…、なんというか、野暮ですよ。
ドノヴァンの「Hurdy Gurdy Man」が効果的に使われています。久しぶりに聴いたなぁ。これって、ジミー・ペイジがギターを弾いていて、ジョン・ボーナムがドラムを叩いてるんだっけ?