PUSHIN' TOO HARD - THE SEEDS
ところで、The Seedsというバンドをご存じでしょうか。フラワー・ムーヴメントたけなわな60年代ロサンゼルスで、かなり幅をきかせたガレージ・サイケ・バンドです。ファズ・ギターと軽快な電気ピアノをベースに、1コードか2コードでひたすら突っ走るナンバーを得意とし、いちばん勢いに乗っていた頃は、なんと、あのDoorsを前座にツアーを廻っていたそうです。しかし、フラワー・ムーヴメントの衰退とともに、バンド活動もフェードアウト…。そんなThe Seedsのリーダー&ヴォーカルを担当していたのが、スカイ・サクソン(Sky Saxon)という男でした。
バンド活動が停止すると、サクソンは、いわゆるスピリチュアルの世界にすっかり魅了され、Sky "Sunlight" Saxonと改名。アンダーグラウンドな活動を続けていたらしいのですが、表舞台からは消えたも同然。しかしッ!「男の星座」チックに言えば(またかよ)、「埋もれなかったッ、この男は!」。
なにがどうしてどうなったのか。2004年、Sky Saxon & The Seeds名義で突然ニュー・アルバム「RED PLANET」をリリースしたんですよ!
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ジリジリと耳障りなファズ・ギターに、ピ〜ヒャラピ〜ヒャラとチープなオルガンがからまり、エコーのなかからヘロヘロの歌声がただよってくる。サクソンは本気で、現実社会が21世紀をむかえたことを知らないのかも…。
しかも、その翌年、2005年にはソロ名義でまたまたアルバム「TRANSPARENCY」を発表。しかも、ライブやインタビューを収めたDVD付き! なぁにがあったんだ、コラァ! 「天啓を受けた」とかサクッと言い返されそう…。
赤やピンクのカラフルな衣装を身にまとった老人が、ヨロヨロ歩きまわりながらバンド・サウンドにあわせて、すっかり角がとれた、けれど成熟とは程遠い、垂れ流しヴォイスをえんえん披露。見ているこっちは、もう気分はすっかり、田舎の温泉旅館のカラオケルームに迷い込んだ気分。でも、慣れてくるとこのぬる〜い空気が気持ち良く感じてくるから、自分で自分がわからない。
「大人になる前に死にたいゼ」とか「大人を信用するな」とか。非常に痛快なフレーズですけど、こういうものを見てしまうと。う〜ん、歳をとるのもひょっとしたら楽しいかも。人間、最期まで、日々勉強ですよ。