オーグロ慎太郎の「新・夜明けのない朝」

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「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」(2005)

Walk_the_line 幼少のころ、心に深い傷を負った少年は、鬱屈した内面を表現したい衝動から逃れることができない。ゴスペルを唄って生計をたてたかったのに、レコード会社に認められたのは、人殺しの歌だった。ティーンエイジャーたちのアイドルに成り上がっても、保守的な両親や妻は、まるで関心をしめさない。エルヴィスやジェリー・リー・ルイスらとの巡業は、各地で熱狂的に受け入れられるけれど、印象にのこるのは、移動バスのなかでの彼らの疲弊しきった表情。口先や空手形で世渡りができない不器用な男は、お約束のようにアルコールとドラッグの誘惑におぼれ、ドン底に引きずり込まれていく。

この映画には目新しいものはなにもない。はたして自分に生きる値打ちはあるのか。金や地位や名声は、人を幸せにしてくれるのか。こんなに努力しているのに、どうして君は理解してくれないのか。親族からも見放されたとき、救いの手をさしのべてくれるのは誰なのか。自分の生き方に、誰が答えをだしてくれるのか…。どれも、数限りなく語り継がれてきた、ありきたりのテーマばかりである。しかし、そんな当たり前のことさえ、人々は忘れてしまうのである。

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