「ピーマン80」(1979)
新井康弘演じる貧乏大学生が、ひょんなことから大泥棒(谷隼人)と手を組み、大手デパートの売上金を強奪する…、という最低限のプロットを用意して、その細い幹に、全編、ありったけの思いつきとしか考えられない幼稚なギャグが、たたみかけでまぶしてある映画です。
「うわ〜、一発ギャグの、宝石箱や〜!!」と喜びたいところだけど…。たとえば、漫画家、というより、TV「クイズダービー」の"宇宙人"こと、はらたいらがラーメンをすすっていると、洗い物をしている新井が「湯気の向こうにうまさが見える」とつぶやく…。おい、こんなのアレだぞ。この当時、はらたいらがインスタントつけ麺のCMに出演していたことを知らないピープルには意味不明だぞ。ほかにも、新井が牛丼の吉野家でバイトしていると、野球のバットをかついだ子供が「やったねパパ、明日はホームランだ!!」と飛びこんでくる…。一事が万事、こんな調子で、後世にこの映画を残そうという気持ちゼロの、純度100%ノー・フューチャーな作品なのでした。
全編にわたってこんな進行なので、いまだソフト化されてないのもむべなるかな、なんですが、主人公役に個性やクセがあれば、なんとか現代でも一部で通用したはず。元ずうとるびの新井康弘には、ちと荷が重かったかな。その代わり、カメオ出演とはいえ、この無駄に豪華なラインナップはどうよ(allcinema ONLINE 参照)。製作・監督の居作昌果(Wikipedia 参照)の人脈ありきなんでしょうね。
視点を変えれば、この当時の風俗を知ることができる映画ではありますが、純粋にコメディとして観ると…。キレてないですよ、キレてない。俺キレさせたらたいしたモンだよ、ウン。